昨日、本会議で令和5年度予算に「反対」の立場から討論を行いました。
これが事実上、私が現状の区政に対して感じる課題や、挑戦を決意するに至った思いをはっきり語る場になるため、思いを込めて、準備して臨みました。
政策論争の口火を切るため、意識的に、かなり強く、はっきりした内容になっています。
録画は近日中に公開されます。
区議会議員として最後の演説、ぜひ見て頂けたら幸いです。
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<令和5年度予算に対する討論>
ただいまから、令和5年度東京都板橋区一般会計および4特別会計の歳入歳出予算の認定に【反対】の立場から討論を行ないます。
今年度の予算には、「明日につなげ 未来を描く『みんなのくらし 応援予算』」という名前がつけられています。
区長がその名に込めた思いの通り、23区初のコミュニティフリッジや、ひきこもり・ひとり親の相談、小学校区ごとの子ども食堂、またケアリーバーやヤングケアラー支援など、これまで目配りが行き届かなかったところまで、きめ細かい支援が事業化されている点には、心から敬意を表します。
<予算に反対する理由>
しかし、私が予算に反対する大きな理由は、
コロナ禍と物価高騰の中で、現状維持の区政に夢や希望が感じられないという、区民の声に、強い危機感を持つようになったためです。
コロナ禍で区民の生活は大きく変わりました。
3年前の4月、最初の緊急事態宣言が出され、学校は休校になりました。テレワークなど働き方が変わり、地域行事も出来なくなりました。私のパートナーはJAZZ BARをやっていますが、飲食業をはじめ、家業に大きな影響を受けた方もいました。
地域での居場所などが利用できない中、孤立を感じるシニアの方や、鬱状態のお母さんお父さんのご相談は、本当に多く寄せられました。
元々予測されていた人口減少や高齢化など、社会の変化は早送りされて、予想より早くやってきました。
私たちは今、今後10年後、20年後に向けて、どちらの未来に進むかの大きな転換点に立っています。
令和5年度予算は、新型コロナの様々な行動制限が解除され、ポストコロナの新たな時代に踏み出す一歩とも言えます。
1ミリでも、2ミリでも、よりよい未来に進む予算を選ぶべきです。
私が現状の区政に感じる課題は、大きく3つあります。
<第一の課題:まちづくり>
第一の課題は、まちづくりです。
先ほども述べた通り、今年度の予算は、ひきこもり支援、コミュニティフリッジなどきめ細かい福祉事業が特色で、その点は高く評価出来ます。
しかし、それらの事業とは比べものにならない予算規模で進んでいるのが、市街地再開発です。
大山、上板橋、板橋駅前、高島平の、4つの市街地再開発事業がいよいよ始まろうとしています。
板橋区が今計画しているまちづくりは、その土地を高度利用した高層マンションを建てるものです。区長はこれまでも、新たな分譲マンションに子育て世代が移り住み、にぎわいが生まれる、という構想を答弁されてきました。
しかし、私は分譲マンションを建てるだけでは、まちに賑わいが生まれるとは思いません。
人口減少の時代、
10年後、20年後の未来を見据えると、大型のマンションを建てることはそれを維持するリスクを負うことにもなります。
財政への影響を考えても、今後10年は市街地再開発の時期が重なり、財政規模は大きくふくらむでしょう。
工事の期間中、駅前や商店街のにぎわいをどう保つか、ということも大きな課題です。
また空き家・空室の増加や家賃高騰、おひとり様や高齢者が賃貸の住まいを確保する居住支援の必要性なども予測される中、行政が分譲マンションを建てる再開発は、本当に街を魅力的にするでしょうか?
ベッドタウンである板橋区にとって、住まいに関する政策は非常に重要で、長期的な視点を持った施策が求められます。
行政がやるべきことは、ハードをつくることではなく、まちを面として考えるエリアマネジメントであり、そこに住む人に重きをおく、まちづくりです。
今の板橋区が進める市街地再開発のあり方は、一度立ち止まって、見直すべきと考えます。
<第二の課題:女性や若者への支援と少子化対策>
第二の課題は、女性や若者への支援と少子化対策です。
政治は今、カギカッコ付きの、「異次元の少子化対策」に取り組もうとしています。
しかし、私は少子化対策として必要なのは、まずは若者や女性の声を聞くことだと考えます。
子どもをもう一人産むかどうか、は一人一人の生き方や働き方、住まいやお金など、将来設計の中で考えていくことです。
これは人生の話です。
子育てをする上で、不安なことの一つが、経済的な負担であることは間違いありません。
また子育ての負担を減らすことも重要です。
この間、板橋区でも待機児童ゼロや子ども家庭総合支援センター、ショートステイやファミリーサポートの充実など、子育て支援もきめ細かく充実させてきました。
しかし事実として、出生数は過去最低です。
もう一人子どもを産まない理由は、机上のデータで、一つか二つ決められるような話ではありません。
また子育ては大変であると同時に、幸せを感じることや子どもに教えられることもたくさんあります。それはアンケートでは出てきません。
最も身近な基礎自治体である板橋区は、
顔が見える区民、顔が見えるあなたのために施策を行うべきです。
区民の生活を目で見て肌で感じ、重要な課題の原因を正確に捉える。
だからこそ、ジェンダーギャップの解消や若者が住みやすいまちづくりと少子化対策へ、当事者へのヒアリングをすべきと考えます。
先日の一般質問でも取り上げた通り、区長が最後までやり遂げると述べられた「板橋区基本計画」の戦略Iには、以下のような文言があります。
>若者が板橋区に住み続けながら就労し、結婚、出産、子育てをして地域に愛着と誇りを持てるまちづくりを推進します
不登校も過去最高で、生きづらさを感じる若者も多い中で、むしろ「若者が住みたくなるまち」とは、多様な生き方や価値観の若者を受容するまちです。
若者が挑戦しようとするときに、挑戦させてあげられない街に、未来はありません。
私は今の政治に、失望と怒りを感じます。
<第三の課題:行政経営のあり方>
第三の課題は、行政経営のあり方です。
基金の残高は1000億円超と過去最大です。
また、令和5年度予算では、公設民営の「にりんそう保育園」の問題がありました。商店街連合会との福祉給付金の問題がありました。
また現在の板橋区役所で、私がもっとも強い危機感を感じる点は、若い職員ほど挑戦しにくい様子が見られることです。
そうした点は、区長の多選による弊害なのではないでしょうか?
近年、全国の人口規模の小さな自治体でも、首長が変わり、デジタル変革やジェンダーギャップ解消など、劇的に進んで変わっていく自治体が多く出てきています。
板橋区は人口が57万人、職員が3600人の大きな自治体だからこそ、東京の23区で22番目に手を挙げるような姿勢では、私は板橋区が、全国の中でも一番衰退していってしまうのではないか、という強い危機感を持っています。
先行きが不透明な時代に、変化に柔軟に対応できる行政、変化に柔軟に対応できるリーダーを区民は求めています。
そのためには、様々な考えの区民や職員、議会と対話をすることが必要です。
坂本区長は10月の決算総括質問で、答弁に立たれました。しかしそれは、事実上の5期目に向けた出馬宣言で、その後は予算委員会でも答弁には、立たれませんでした。
私たち区議会議員は、何千人もの区民のみなさんの思いを背負って、言葉と積み上げたデータだけで、勝負しています。
区長、答えてください。
区議会の限られた場を最大限活かして、区長と区議会が対話し、議論することが、政策を実現し、区民のみなさんの生活を1ミリでも2ミリでもよくするために必要だからです。
令和5年度予算は、ポストコロナの新たな時代に踏み出そうとする一歩にもなるものであり、現状維持ではなく、未来への投資ともいえる予算を組まなければならないはずです。
私は、これまでの議会でも、是々非々で望んできました。
これまでの区政のあり方を一定程度評価し、大きな方向性には賛同しています。
しかしコロナ禍を経て、区民が夢や希望を感じられる、10年後に誇れる板橋をつくるための予算にすることが大切だと考えます。
4特別会計については、持続可能な制度のために、23区共通の運営方針に則って運営する予算であることは理解する一方で、物価高騰などで区民の生活に打撃がある中、負担感がより一層大きくなっている点について、賛同できません。
また「修正動議」について、小中学校の給食費無償化については、私は明確に実施すべきとの立場です。課題は、+13億円の財源確保です。
本来であれば国や都において、自治体間格差を生まないように取り組むべきことであるはずです。しかし、それが叶わないいま、まずは区独自の財源確保策について、より丁寧かつスピーディな検討を重ねるべきと考えており、本動議には反対いたします。
以上述べてきましたが、価値観が多様な時代、様々な考えの区民や職員、議会の声を聞き、新しい答えを見つけていける、変化に柔軟に対応できる行政になることと、世代交代の必要性を求めて、予算に反対するものです。
坂本たけし区長は、出馬宣言の中で、2025年まで、あと3年基本計画を成し遂げることが自分の責任だ、とおっしゃいました。
しかし私は今、5歳の子どもの母親です。3年後のことではない、子どもが大人になる10年後、20年後のために今、仕事をしています。10年後、20年後を考えることが、現役世代の、私が負っている責任です。
最後に、今年度で退職される職員の皆さんと勇退される議員の皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
子どもたちの未来のために、10年先に誇れる板橋を一緒につくるべきと述べさせて頂き、私の討論を終わります。
ありがとうございました。
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